【高専卒進学のメリット・デメリット】大学編入は「正解」か?資産とキャリアの機会損失を徹底分析
皆さん、こんにちは。Kosen Assetのbadoです。
5年という長い高専生活の中でも最も判断に悩む問題、卒業後の進路。「周りが進学するから自分も…」となんとなく考えていたり、「やっぱり大卒の肩書きが欲しい」「もっと研究がしたい」という熱い思いを持っていたり。色々な考えが頭をよぎると思います。
そこで今回は、実際に就職を選んだ私だからこそ見える視点で、進学のメリット・デメリットをキャリアと資産形成の観点から整理してみました。
まず結論からお伝えします。
大学編入(進学)は、高専卒が抱える「キャリアの天井」を破壊する、唯一にして最強の選択肢です。 社会的にも、大手企業の構造的にも、高学歴が求められる現実は間違いなく存在します。
しかし、同時にこうもお伝えしなければなりません。
「進学には、目に見えない莫大なコストと、覚悟が必要なリスクがある」と。
それでは、この「人生への投資」があなたにとって割に合うものか、一緒に考えていきましょう。
「高専卒就職のメリットデメリット」を先に詳しく知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。

【進学の現実】高専卒編入が背負う「3つのデメリット・リスク」
進学の華やかな面に目を向ける前に、まずは現実的な「コスト」について直視しておきましょう。これを知らずに進むと、後で「こんなはずじゃなかった」と苦しむことになります。
金銭的・時間的な「機会損失」の論理
私たち高専卒が就職する場合、20歳から稼ぎ始めます。一方で、大学編入して修士(大学院)まで行くと、社会に出るのは24歳です。
この「4年間の差」は、20代の金銭面において決定的な違いを生みます。
国立大学・大学院でも、4年間で数百万円の出費です
私立大学に進んだ場合は、さらに高額になります
就職していれば得られたはずの給与(約1,000万〜1,500万円)
若いうちの4年間で種銭を作り、運用に回す機会を失います。
(資産形成を考えている人向けの話になります)
つまり、進学を選んだ瞬間、就職の道を選択した同級生に比べて「マイナス一千万円程」の資産差からのスタートになるという現実は、理解しておく必要があります。
専門分野の「柔軟性」の喪失
高専から大学へ編入する場合、基本的には同系統の学科に進むことになります。
もし、「高専で化学をやってみたけど、実はITがやりたかった」と気づいても、編入での専攻変更はハードルが高く、進路の修正が効きにくい側面があります。
編入後も続く、高い水準での「努力要求」
ここが一番の盲点かもしれません。「大学に入れば遊べる」と思っていませんか?
編入生は、一般生が1〜2年次に取った単位を認定してもらいつつ、3年次の専門科目を履修するため、カリキュラムが非常に過密になります。
さらに重要なのは、卒業後の環境です。
進学して目指す「研究開発職」や「大手のエリートコース」は、周りも全員優秀です。
彼らは休日も業界の勉強をしたり、専門書を読んだり常に自己研鑽を続けている人が多いです。
「入って終わり」ではなく、「高いレベルで努力し続ける生活」が一生続く。 その覚悟がなければ、せっかく進学しても競争に疲弊してしまうでしょう。
進学で得られる「究極のリターン」
厳しい話をしましたが、もちろん進学には、それらのコストを支払ってでも手に入れる価値のある「莫大なリターン」があります。
「キャリア天井」の完全な破壊
高専卒のままだと、どうしても越えられない「出世の壁」や「職種の制限」が存在します。
進学は、このガラスの天井を粉々に破壊し、幹部候補やリーダーとしてのキャリアパスを切り開くためのチケットになります。
知的な刺激と環境のアップグレード
人間は、環境の影響を受けやすい生物です。
現場には高卒や専門卒の方も多く働いています。もちろん彼らは実務のプロですが、アカデミックな議論や論理的な思考を共有できる相手は少なくなりがちです。環境によっては、高専で培った知識を使わず、成長が停滞するリスクもあります。
周りは勉強して当たり前、議論して当たり前という環境です。優秀な仲間や教授に囲まれることで、知的好奇心が満たされ、自己成長のスピードが加速します。
でも、就職しても周りの人から学べることは多いんじゃないですか?

もちろんそうです。でも、「学ぶ意欲の基準値」が違うことが多いんです。
実際、私の職場でも、「知識がないから無理」と調べる前、勉強する前から諦めてしまう同僚がいます。悪気があるわけではなく、それがその人たちの「当たり前」になってしまっているんです。
「周りの当たり前」は自分に伝染します。 自分が高い基準で努力し続けられるか不安なら、環境(進学)をお金で買うのも賢い選択だと思いますよ。

「給与形態の壁」の突破と生涯賃金の最大化
ここが今後の人生において重要なポイントです。日本の大手メーカーには、明確な「2つの給与体系」が存在することが多いです。
- 月給は安定して昇給するが、賞与(ボーナス)の変動幅が小さい。
- 管理職になれる人数に限りがある。
- 賞与が「会社業績連動型」であることが多く、業績が良い時のリターンが非常に大きい。
- 昇進スピードが早く、基本給の上昇率も高い。
この構造の違いにより、初期の4年間の遅れを取り戻し、生涯賃金では数千万円〜1億円以上の差をつけて逆転することが可能です。進学は、この「高リターンな給与テーブル」に移るためのパスポートなのです。
参考資料として、厚生労働省のデータを見てみましょう。 55歳時点での年収を比較すると、高専卒と大学院卒の間には、男性で約200万円、女性で約300万円もの開きがあるようです。
もちろん、現代は少子化の影響で転職市場も活発化しており、学歴による生涯賃金の差は、今後の個人の努力次第で十分に覆せると私も考えています。 とはいえ、統計的な傾向としてこれだけの差があるという事実は、進学か就職かを判断する上で、非常に大きな指標になるはずです。

[参考資料]


大学編入したなら「大学院」まで行くべきか?
もし編入を決意したなら、私の提案は一つです。
「基本的には、修士(Master)まで行く覚悟を持ちましょう」
なぜなら、大手メーカーの研究開発職や設計開発職の応募要件は、今や「修士了以上」がスタンダードになりつつあるからです。
学部卒(学士)のままだと、「大卒扱い」にはなりますが、専門性を活かした最上流の仕事に就くには中途半端になるリスクがあります。
ただし、大学院入試という新たなハードルと、さらに2年間の学費がかかることは忘れないでください。
結論(あなたの人生の優先順位は?)
メリットとデメリットが出揃いました。
正解はありませんが、あなたの価値観や状況に合わせた「最適解」を整理してみましょう。
【就職】が理にかなっている人
早く自立して資産を作りたいという人。
ただし、給与水準は大卒に劣るため、浪費せずしっかり投資・貯金に給与を回すことが条件です。
趣味等に多くのお金をかけつつ、資産形成も行いたいという人は大学院まで行って給与の高い職に就く方が良いと思います。
工場勤務という環境でも、資格取得や自己研鑽を続け、現場のプロフェッショナルとして、あるいは技術移管などの重要業務を勝ち取る気概がある人。
工場勤務であれば、「毎日最低限のタスクをこなして安定給を得る」という生き方もできます。働くのが性に合わないという人は、このような働き方も大いに選択肢の一つだと思います。恥じる必要はありません。
ただ、将来的なキャリア・賃金の停滞リスクがあることは忘れないでください。

経済的な理由で進学が難しいなら、無理せず就職し、実務経験という武器を磨くのも立派な戦略です。
【進学】が理にかなっている人
親御さんの支援がある、または奨学金を借りてでも生涯賃金でペイする自信がある。
休日も勉強や研究に費やすことが苦にならず、知的生産活動を楽しめる
「どうしても研究開発がしたい」「最先端の技術に触れていたい」などという強い意志がある
誤解しないでほしいのは、就職を選んだからといって「成長が止まる」わけではない、ということです。
実際、私は今、工場のQC職として新薬の技術移管という重要なプロジェクトに携わっています。これは通常、ベテランが主導する業務ですが、資格取得や日々の業務改善での実績が評価され、若手の私に巡ってきました。
工場勤務には「最低限のタスクで給料をもらう人」もいますが、「自ら努力してキャリアを切り拓く人」も必ず評価されます。
「流されるか、突き抜けるか」。就職を選んだとしても、その選択権は常にあなたの手の中にありますよ。

最後に
進学を選べば、確かに勉強は大変です。しかし、そこで得られる「考える力」と「人脈」は一生の財産になります。
逆に就職を選べば、「若さ」と「経験」という強力な武器が手に入ります。
大切なのは、周りに流されるのではなく、「自分の人生の優先順位」に従って決めることです。
もし、「就職のメリット・デメリットについても、もっと詳しく比較したい」という場合は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。両方の選択肢を天秤にかけることで、より納得のいく決断ができるはずです。
進学という選択は、あなたの人生への大きな投資です。その投資を成功させるための戦略を、じっくりと練りましょう。

